第38回卒業証書授与式 校長式辞

暖かな日差しの中に、春の足音が聞こえてくる、今日の良き日に、ご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、第三十八回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、教職員一同の大きな喜びであり、高い席からではありますが、ご臨席いただきました皆様に心から厚くお礼申し上げます。

第三十八回生、三百十五名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんとは、一年間しか一緒に生活することができませんでしたが、その間、機会あるごとに私の思いを言葉として伝えてきました。

「一流の努力」 

「一歩を踏み出す勇気」 

「向上心」

そして、四十周年記念式典では、本校の校訓であり、最も大切にしている三つの言葉、「知・行・恕」の実践をお願いしました。皆さん覚えているでしょうか。

今日は、皆さんへの最後のメッセージとして「卒業証書」についてお話しします。さきほど皆さんに卒業証書を渡しました。そこにはたくさんのメッセージが込められています。本文には、皆さんが令和二年三月一日に小牧南高等学校全日制普通科の教育課程を卒業したことを証明する言葉が書かれています。これは、皆さんが一人の人間として精神的な自立を果たし、三月一日をもって、社会人としての自覚と責任を胸に、新しい第一歩を踏み出す決意を促す言葉です。

そして、皆さんの名前と生まれた日が書かれています。皆さんは、いまから十八年前、多くの人の祝福と愛情につつまれてこの世に生まれました。その日は、皆さんが周囲の人たちを最初に幸せにした日です。詩人の坂村真民は、

「子を抱いていると ゆく末のことが案じられる

よい人にめぐりあってくれと おのずから涙がにじんでくる」

とわが子への思いを語っていますが、皆さんの家族も、きっと同じ思いで、今日まで祈るような気持ちで、温かく皆さんを見守ってきたと思います。

今日までの自分を振り返って下さい。きらめくような青春時代を共に過ごし、支えあい、喜びを分かち合った友達、皆さんのことをいつも心配し、一生懸命励まし、導いてくれた先生。なんと多くの人に支えられてきたことでしょう。そして、皆さんにとって大切な人は、今までも、そしてこれからも、一番身近にいる人であることに気づくと思います。

この卒業証書には、君たちが一つの命として生まれ、その命に託した親の思いや願い、皆さんを応援するたくさんの人たちの愛、夢、希望、そして、皆さんが様々な困難を乗り越えて学び続けてきた証が詰まっています。

卒業証書の一番左には、番号が書かれています。三十八回生は第一万三千六十七号から始まります。この番号は、小牧南高校の第一回卒業生からずっとつながっている番号であり、現在一万三千名を超える先輩方が、社会で活躍していることを示しています。皆さんの中には、卒業して社会に出ることを不安に思っている人がいるかもしれません。しかし、心配しないでください。困ったときや、悩んだときは、同じ学び舎で青春の汗を流した、一万三千名の先輩方が、皆さんを必ず温かく支えてくれます。

そして、卒業証書に校長の名前と校印が押してあります。これは、皆さんが本校で三年間、学校生活に真摯に向き合い、自立を目指し、ひたむきに努力を続けた、素晴らしい生徒であったことを証明する署名です。

皆さんは、本校の歴史と伝統の中に刻まれた大切な卒業生です。うれしいとき、苦しいとき、困ったとき、いつでも学校へ帰ってきてください。小牧南高校はいつでも温かく皆さんを迎えます。牧南は今も、これからもずっと、皆さんの母校であり、心のふるさとであり続けることを約束します。

保護者の皆様には、本日のお子様のご卒業、誠におめでとうございます。われわれが胸を張って誇ることができる、素晴らしい生徒たちでした。これまで学校が賜りました、熱心なご支援・ご協力に深く感謝申し上げますとともに、お子様の今後の御活躍をお祈り申し上げます。

さあ、三十八回生の皆さん、いよいよ本校を巣立つときが来ました。イギリスの詩人アレキサンダー・ホープは、人生を広大な海にたとえ、次のように詠んでいます。

「理性なる海図を持ち されど情熱こそ われを駆る疾風(かぜ)」。

船を進ませる疾風こそ、皆さんひとりひとりの情熱と強い意志であります。皆さんが、それぞれの未来に向け、本校の校訓である「知・行・恕」の実践のもと、「向上心」と「一歩を踏み出す勇気」をもって「一流の努力」を続け、逞(たくま)しく羽ばたいていってくれることを期待しています。

卒業生諸君の今後の健康と発展を念ずるとともに、皆さんの前途に幸多からんことをお祈りして式辞とします。

令和二年二月二十八日

愛知県立小牧南高等学校長  山田 満貴