小牧南高校の生徒諸君へ

いまこそ「恕のこころ」を

コロナウィルスは恐ろしい。その脅威は感染力の強さや致死率の高さだけではない。人と人との絆を破壊する。そのせいで日常が奪われてしまった。君たちも、期待に胸を膨らませ、希望にあふれた新しい生活をスタートすることができずにいる。社会を見回しても、ほとんどのイベントや行事が延期または中止となり、ありとあらゆる人間的な営み、日常の行動が制限されてしまった。

コロナウィルスは、我々の肉体だけでなく、精神や心も侵していく。日本中が、暗く重苦しい空気に覆われ、人々の不安が増長されている。その不安が、他者への偏見や差別、中傷へと向かう。誰もがお互いに距離を置くようになり、人々から笑顔が消え、優しさや思いやりが失われていく。これが、このウィルスの本当の恐ろしさなのかもしれない。

だからこそ、いま「恕のこころ」が必要ではないだろうか。「恕のこころ」とは、他を受け入れ、認め、その人の痛みや、苦しみ、喜びを自分のことのように感じることができるこころである。イライラしたり、不平不満を言ったり、お互いにいがみ合うのはやめよう。逆に、周りの人の心を思いやり、他のために自分ができることに積極的に取り組もう。家族の世話をする、家の掃除洗濯をする、医療従事者の人々へ感謝や励ましの言葉を送るなど、家族のために、自分の生活を懸命に支えてくれている人々のために、今自分で何ができるか考え、行動しよう。その経験は、自らの成長を促すとともに、必ずいつか自分を助けてくれる。

また、時間はたっぷりある。将来の自分のために、「一流の努力」も始めて欲しい。先人の知恵が詰まった本を読み、自分の将来をゆっくり考える機会でもある。休校期間は、今までの自分を振り返り、大きく成長させるチャンスでもある。

大きな悲しみと苦しみをもたらしたコロナウィルスは、今までの既成概念を捨て去り、新しい社会環境を築き始めるスタートになるかもしれない。それを担うのは、柔軟な思考と未来への可能性を持つ君たちである。「恕のこころ」を持ち、「一流の努力」を積み重ね、君たちにはぜひ、新時代へのパイオニアになって欲しいと思う。

令和2年5月7日     小牧南高等学校長  山田 満貴