シチズンシップの先人
主権者教育の推進が、大きな課題となっています。昨年公職選挙法の一部が改正され、選挙権を有する齢が満18歳以上に引き上げられたことで、高校生も在学中に選挙権を得る場合が出て、これまで以上に公民としての資質を育む指導が求められ始めたからです。
「私たちが拓く日本の未来」という副読本が配付され、本校でも、公民科の授業や総合的な学習の時間に、主権者としての意識を高めるための授業が行われています。
日本ではまだ始まったばかりの主権者教育ですが、欧米では、1990年代から、子供の公共意識などを育むシチズンシップ教育が定着しています。シチズンシップ教育とは、市民としての資質・能力の育成を目標とし、個人の権利や人種の多様性を尊重し、社会の中で円滑な人間関係を維持するために必要な能力を養うものです。今後、日本でもシチズンシップ教育、主権者教育は、さらに普及していくのでしょうが、そのような教育を受けていない私たち大人もまた、よりよきシチズン(市民)、主権者であるべきことは言うまでもありません。責任重大ですが、子供たちと一緒になって学ぶ意識が大切だと思います。
さて、一年前の「牧南」で岐阜県八百津町における杉原千畝顕彰短歌大会を紹介しましたが、今年も二年生が勇気賞を受賞しました。
人類が平和のための代償に失ったのは平和 そのもの 中本颯太
やや難解な歌ですが、平和の維持を大義名分にして、戦争が行われてきた歴史の現実を見つめた歌でしょう。杉原がリトアニアのユダヤ人をナチスドイツから救ったのは、戦前のことですが、考えてみれば、このような勇気あるシチズンシップを発揮した先人を日本人は有しているのであり、誇らしくもあります。様々な形で本校の生徒にも、人間の尊厳を学んで欲しいと願ってやみません。
「牧南」第90号(平成28年7月15日発行)より