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少年、少女たちよ

                            校長 小塩 卓哉

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。期待に胸をふくらませ本校の校門をくぐられてからはや3年。本日栄えある卒業の日を迎えられました。勉強や部活動、そして学校行事と、何事にも全力で取り組まれ、思い出も一杯たくわえられたことと思います。今日この日の感動をしっかりと胸に刻み、明日からの輝かしい旅立ちの糧にしていただきたいと思います。
保護者の皆さまには、お子様の誕生以来、18年間にわたり、深い愛情をもってお育てになって来られ、こうして立派に成長された姿を前にして、さぞかしお喜びのことと拝察申し上げます。本日の晴れのご卒業を心よりお祝いを申し上げますとともに、3年間にわたり本校の教育に対してご支援をいただきましたことに、改めて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
さて、ありきたりの言葉ではありますが、旅立ちの時にある18歳の若者には、「少年よ大志を抱け(Boys,be ambitious.)」、というクラーク博士の言葉を贈りたくなります。明治9年に新政府が米国から招いたクラーク博士は札幌農学校(後の北海道大学)初代教頭として実学指導に心を砕き、別れの際にこの言葉を教え子たちに言ったそうです。最近はクラーク博士のその後の人生についても調査されており、母国に戻った後は、船で世界一周をしながら学ぶという洋上大学構想を主導しましたが、不十分な計画と資金難で頓挫し、財産も社会的信用も失ったまま逝去したことが知られています。本人は、決して大志を果たしたとは言いがたいのですが、この言葉自体は、今なお若者の背中を押して敢然とさせてくれる言葉だと思います。
昨年の秋私は、初めて北海道大学のキャンパスの中を歩きました。有名なポプラ並木は実に見事なもので、札幌駅のすぐそばにあるにも関わらず広大な敷地をもつこの大学のスケールに圧倒されました。大学内には、クラーク博士の胸像もあり、その前に立ち大学のキャンパスを見回してみると、「少年よ大志を抱け」というフレーズは、近代の黎明期である明治の初頭に、北海道という未踏の地にはあって投げ掛けられたからこそ、今なお色褪せることなく、若者たちを魅了するのだと思い知ったことでした。
少し将来へと先回りをするようですが、「ボーイ・ミーツ・ガール(Boy meets girl.)」という言葉もあります。これは、物語の類型を言い表す用語として使われます。直訳すると「少年が少女に会う」ということから、一人の少年が少女に出会い恋に落ちるパターンの物語のことを言います。恋に落ちるかどうかは置いても、卒業生の皆さんは、これから様々な未知の人と出会い、自分の人生を築き上げてゆかねばなりません。「ボーイ・ミーツ・ガール」は類型を表していますが、卒業生も含め我々は皆、類型の中から自分の人生を見つけ、自分なりに磨いていくのだと思います。
少年(ボーイ)の語で始まる二つのフレーズを紹介しましたが、もちろん少女(ガール)もまた、少年以上に、自分の人生を自分で切り開く時代となっています。現代では、クラーク博士のように洗練された言葉で励ましてくれるのは、もちろん男性に限りません。クラーク像といえば、札幌の近郊羊ヶ丘に立つ右手で原野を指し示すものが有名です。卒業生の諸君には、担任・副担の先生方が示す彼方をしっかりと目指して欲しいと願って止みません。
「牧南」第91号(平成29年3月1日発行)より