本年度の研究目標
- 国語科において、アクティブ・ラーニングを導入するに当たり、各評価の観点に対応したパフォーマンス課題及びルーブリックを開発し、パフォーマンス評価を各教材の一連の指導の中で、有効に行う方策を研究する。
- 「思考力・判断力・表現力」を磨くことを目標とし、言語活動を充実させるために、メディアリテラシーを養うための授業方法を確立する。
- グループ単位の活動を通して、対話的、主体的な学びの機会を創出し、自己評価や、相互評価をより確かに行えるようにする。
- 年度を追って他教科が加わることで、国語科の学びの汎用性を高める研究とする。
年間の実践研究内容
実践日と内容 | 教科科目と単元 | 実践内容 |
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6月5日 先進校視察 |
愛知県立碧南高校(地歴公民科) | |
7月7日 研究授業 |
古典A「大鏡 あの日宣旨は下された」 | 本文の番組化と相互批評を通して作品を深く鑑賞する |
7月13日 授業実践 |
倫理「人間としての自覚 孟 子」 | グループ・ディスカッションにより儒家の思想を学ぶ |
8月 研修会参加 |
NIE全国大会 教育改革先取りセミナー | |
10月12日 先進校視察 |
岐阜県立多治見高校(国語科・地歴公民科・数学科・理科) | |
10月18日 授業実践 |
政経「現代社会の諸課題」 | 新聞記事を選んで、グループ内でプレゼンを行う |
11月7日 先進校視察 |
愛知県立東海南高校(理科) | |
11月8日 授業実践 |
政経「政治参加と民主政治の課題」 | 支持政党を選んだ理由を発表し、ディスカッションする |
11月10日 授業実践 |
現代文B「写真に比喩表現を使った短文をつけよう」 | 比喩表現の創作と発表を、相互評価を取り入れて行う |
11月14日 公開授業・研究協議 |
古典B「無名抄 短歌の創作と相互批評を通して、本文の読解を深める」 日本史B「貴族政治と国風文化」 グループ研究協議及びパネルディスカッション |
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11月15日 先進校視察 |
愛知県立幸田高校(数学科) | |
11月22日 授業実践 |
古典B「源氏物語と長恨歌」 | ペアワーク・グループワークを取り入れて、両作品を比べ読みする |
1月 授業実践 |
国語総合「竹取物語」 | 本文の読み比べ学習をジグソー法で行う |
研究成果の評価及び普及・還元について
(1)研究員の自己評価
平成二十九年度の二年次の研究では、前年度の担当者、青、池山両教諭が三年生を対象に、現代文、古典でアクティブ・ラーニングの授業研究を行った。前年度において研究した、パフォーマンス課題の導入のタイミングや、評価手法をさらに進めることで、より深い理解にたどりつけるような学習形態、指導方法を開発できたのではないかと思っている。今年度の公開授業研究会は、11月14日に行った。担当の青教諭が、受験が間近な3年生の古文の授業(「無名抄」)において、本格的にアクティブ・ラーニングを導入した授業を公開したことで、会場からは驚きもあったようであるが、深い学びのためには、むしろこのような学習形態が大きな可能性をもつことを明らかにできたのではないだろうか。今年度は地理歴史・公民科でもアクティブ・ラーニングを導入し、公開授業も行ったが、異なる教科の授業を同時展開で行うということは、最後の総括がどうしても二班に分かれるので、運営上難しい面もあった。しかし、二教科で行うということを学校全体でアナウンスしたことで、他教科にも、主体的な学びを取り入れる気運が高まったように感じられる。今年度も指導に当たっていただいた酒井、柴田の両先生及びに高等学校教育課、総合教育センターの先生方からはお忙しい中、十分かつ貴重な助言をいただけた。その内容は別途「研究のまとめ」の第1部にまとめてある。生徒会活動にアクティブ・ラーニングの授業体験が有効なことは前年度のまとめでも述べたが、今年度は小牧市長とのミーティングの折に、小牧市の図書館建設に高校生の意見を述べる際、本校が培ってきたグループ討議に関するスキルが発揮され、以後、市に要請されて度々、市主催のミーティングに生徒が参加するという機会をもつこととなった。これは副次的というよりは、アクティブ・ラーニングによる深い学びの着実な成果であると考えている。三年次は、数学科、理科にも広げていく予定であり、アクティブ・ラーニングの研究指定校間で成果の交換も活発に行いたいと考えている。(研究総括者:小塩卓哉)
今年度は校内の研究会議において、国語科だけでなく地歴・公民科、数学科、理科のメンバーが加わった。国語科、地歴・公民科、理科でALを積極的に取り入れた授業改善が行われ、2年目や初任者の若手教員にも研究の輪が広がってきた。「研究のまとめ」第2部に各教科の学習指導案を網羅的にまとめてある。今後の指導に活用されるものと考えている。柴田先生の指導により、目指す生徒像を全職員が共有し、全校で取り組むことによって、学校・生徒は確実に変わってきている。一方で研究の進展につれ課題が深まってきているのも以下のコメントに見る通りである。研究成果の共有により授業改善の質を更に向上させ、AL を本校にしっかり根付かせていきたい。(研究会議運営:瀬尾 学)
研究も二年目に入り、アクティブ・ラーニングの輪郭のようなものが見えつつある中での実践となった。担当学年が三年生であったため、受験指導が必須であり、昨年度と同じ実践を繰り返すというわけにはいかなかった。自分としては、受験指導とアクティブ・ラーニングを分けるのではなく、受験指導をアクティブ・ラーニングの形で行うという実践を心がけた。アクティブ・ラーニングにより、生徒の学力も担保され、しかも深い学びにたどり着けるならば、理想的である。実際には、昨年同様、うまくいったりいかなかったりしたが、生徒の成長は確実に感じることができた。アクティブ・ラーニング型の授業に慣れ、自分の意見を皆の前で臆せず発表できる生徒に育ってくれたこと、友達の発表を真摯に聞く態度を身につけてくれたことが一番の成果だと感じている。自分自身の成長はなかなか実感できない状態であるが、来年度さらに実践を続けることで、授業力を高めていきたい。(研究主務者・青ちづる)
もし3年生からいきなりアクティブ・ラーニングが始まったならば、「入試があるから」と生徒はとまどいを感じていたかもしれない。しかし今年度の様々な実践に、生徒がスムーズに意欲的に取り組んでくれた大きな要因は、2点あったと思う。1点目は、昨年度から持ち上がった学年であったため生徒がアクティブ・ラーニング形式に慣れていたこと、2点目は、3年生だからこそ既習知識を応用させる活動を実践でき、受験指導としても機能したことである。「なぜアクティブ・ラーニングを行うか」について生徒と共通理解をもったうえで活動を行う大切さ、継続することによってこそ身に付くものがあることを改めて感じた1年であった。そして「主体的に考える力」や「他者と協働する力」が受験にとどまらず実社会において求められていく3年生に、「国語」という教科を通してそれらの力の育成に関われたことをうれしく思う。今年度も多くの先生方から貴重な御指導・御助言をいただき、自分の実践を改善する機会をいただくことができた。また、授業参観をさせていただいた際には、どのようにアレンジするかを考えることで新たな授業構想のヒントをいただくことができた。しかし一方で、いまだ課題は多い。深い学びへとつなげる方策と、適切な評価のあり方などである。さらに、生徒の各学習段階に応じたアクティブ・ラーニングの実践も模索していきたい。(国語科:池山朋花)
アクティブ・ラーニングの委員に今年度から加わったものの、ALという手段を媒介して生徒の学習を深めるためにはどうしたらいいのかと苦しみ、授業を生徒の活動に委ねる難しさも実感した一年であった。2020年度以降実施の大学入学共通テストでは、情報の統合化や構造化をする能力を問う問題が出題されると想定する。そこで実践では、日本と中国の文学比較を通して、文化の特質や関係について情報を構造化し、理解を深めさせることを目的とした授業を行った。本実践は未熟ではあったが、今後の自分自身におけるAL実践の一歩を踏み出せたのではないかと思う。今後もALの視点で自己の授業を見つめ直し、生徒と共に向上していけるような授業作りに励んでいきたい。(国語科:福田亜里沙)
今年度は、地歴公民科でもアクティブ・ラーニングを導入したので、担当教員の自己評価の概略を以下に示す。
今年度から、アクティブ・ラーニングの研究を本格的に進めてきて、改めて生徒を能動的に動かしながら授業を展開していくことの重要性と難しさを認識することができた。担当したのは2年生の文系日本史選択者で、教科の特性上、教員がひたすら講義をしがちであった。その中で生徒に主体的に活動させることで、少しは歴史のダイナミズムや深さを伝えることができたのではないかと思う。ただ、今年一年の授業では、生徒の主体的な活動が、こちらの予想以上に盛り上がり、予定していた内容が1時間で終わりきらないという事態も多々見られた。時間配分を上手に行なっていかないと、授業の進度にばらつきが出てしまう点は、より突き詰めていく必要があると感じられた。今後も教材研究を重ねて、生徒に深い学びを与えられるようにしていきたい。(地歴・公民科:石川直大)
私が新任の時はアクティブ・ラーニングについては積極的な風潮はなかった。しかし、古今東西で普遍的に通用する教授方法がある。その一つが歴史的偉人が示唆するようにアクティブ・ラーニングなのかも知れない。一年の研究を終え、納得したアクティブ・ラーニングができなかった歯がゆい気持ちを思い出した。今回その気持ちはより一層増幅したように感じる。(地歴・公民科:吉田将人)
(2)研究成果の普及・還元
- 11月に行った公開形式よる研究授業には、約90名の参加があった。総合教育センターにファシリテーターを依頼し、グループ形式で行った研究協議会は、二教科で併行して行ったため、時間の確保や、助言者の確保など、運営上難しい問題もあったが、参加者の意欲を刺激するのに十分であった。
- 授業研究の専門家からの授業方法、評価に関する知見を多く得られた。
- 地歴・公民科にもアクティブ・ラーニングの担当者を設置したことで、国語科だけでなく、他教科でも普及しなければならないというメッセージを学校全体に発信することができた。
- 他県への視察や、研究会などに参加することで、全国的な水準を把握しつつ実践を行った。
- 他の研究指定校の公開研究授業に参加することで、本校の、地理歴史・公民科、数学科、理科の研究に資することができた。
- 研究2年次の中間まとめを作成し、校内他教科への普及のために供している。
中間まとめ(研究2年目)からの抜粋
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